本所七不思議 -其の三-「落葉なき椎」

隅田川のへりに大名屋敷が連なり、

その中でも松浦家の上屋敷は「椎ノ木屋敷(しいのきやしき)」と呼ばれていた。

うっそうと茂った樹齢何百年かわからない椎の木が、

枝を塀の外まで伸ばしていた。

ところが・・・

「うーむ・・・。

やはり、やはり不可思議だ・・・」

「もう何年とこの木を見てきているが、葉が一枚も落ちない。

どの季節でも、どんな天気でも。

しかも、わたしだけではなく、

葉が落ちているのを誰も見たことがないなど・・・。

解せぬ、解せぬぞ・・・」

椎の古木は、今日も葉を落とさない。


本所七不思議、「落葉なき椎」の話。